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「グギギィ!!」
谷口は眉間にしわを寄せて白目を剥き、食いしばった口から泡を吹いていた。
僕はそれまで金縛りにあったように動けなかったが、その様子を見て谷口に近寄ろうと恐る恐る前へ出た。
激しく光を放つ魔方陣のような模様の前まで来ると少し躊躇したが、このままではどうにかなってしまうのではないかと心配になり、谷口の肩に手をかけようとした。

「ち……近寄るなッ!!」

白目を剥いた谷口が大声を上げて僕の手を払った。
バキバキバキィッ!!
谷口に払われた僕の手から凄まじい光と音が響いた。

「あうぐッ!!」
その場にしゃがみこんで手を見てみると、手の平がザックリと切れて血があふれ出ていた。
痛みは感じられず、手の平ものすごく熱い。

谷口を見ると意識を失っているのか、ダラリと力なく立っているように見えるが、つま先が地面から数センチ浮いている。
谷口の周りを激しく渦を巻きながら登り上がる光がさらに激しくなっていた。
あの場所から谷口を退かさなければ、あいつは死んでしまうかもしれない。
助けてやりたいと言う気持ちが沸々と湧き上がり、考えるよりも先に行動していた。

少し助走距離を取り、谷口を目掛けて突進した。体当たりしか思いつかなかったのだ。

僕は両腕を頭の上で十字に構え谷口の腰の辺りにぶつかった。激しい衝撃は感じられず、何か軟らかい物にぶつかったような感触だった。
目をつぶっていたので状況は分からなかったが、冷却スプレーをかけられたような冷たさを全身に感じ、ビクリと体が痙攣した。

僕に押された谷口は、ゼリー状の塊の中からズルリと出て行くようにゆっくりと魔方陣の外に倒れていった。
僕は体制を崩し、さっき傷ついた方の手を床についてしまった。

バシュゥゥウッ!!!
凄まじい音と共に今まで青白く渦を巻いていた光が消え、黒い光と言うのか煙のような物が床から噴出し部屋全体に充満した。

僕は閉じてしまいそうになる瞼を無理やり開き、その様子を見ている途中で意識を失った。

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積まれた本の間をソロソロと歩いて行くと、谷口が部屋の奥に立っていた。
だらりと力無く下がった手には小さなナイフを持っている。

「おいッ! 谷口!! 何やってんだッ」
僕はナイフを見て自殺でもするのかと思い、血の気が引いた。

「寄るな!!」
谷口は今まで聞いた事の無い大きな声で駆け寄ろうとする僕を制した。
僕はその声に驚き、その場で固まってしまった。

その時、谷口の足元に何か見えた。
文字のような絵のような、禍々しいデザインの模様が描いてある。

「大丈夫、安心して良いよ死んだりしないから」
「見ててよ」
谷口は静かに目を閉じると、ナイフで自分の左手の親指に傷を付けた。
たちまち血が滴り、床を濡らした。
落ちた血を足を使って拭くような動作を見せると、足元の模様が青白く光り始めた。

「う、うわぁ!!」
僕は驚き、二・三歩後じさってしまった。

見る間に光が上に伸びて行き、谷口の全身を包んでしまった。
僕は何がなんだか分からずに、呆然とその様子を眺めていた、というよりも身動きが取れなくなってしまたのだ。

綺麗なベールに包まれたような光が谷口を包んでいたが、その光が少し歪み始めた。
段々歪みが酷くなり、竜巻のように谷口の周りを回転しはじめた。
次の瞬間、谷口がガクガクと痙攣しながらうなり声を上げた。

「ううぐぐぅッ!! イギギィ……」

谷口はポケットから図書室の鍵を出し、入っていった。
図書カードなどが置かれたカウンターに入って行き、自分の机であるかのような手つきで引き出しを開けて消毒液やら絆創膏を取り出している。

「僕ね、いつもここに薬とか入れてるんだよ」
綿に消毒液を付けて切れた口元などを拭きながらニコリと笑っている。

「お前図書委員やってるのか?」

「ううん、いつもここに来ていたら図書係のおばさんと仲良くなって、鍵を渡してもらったんだよ」
「秘密なんだけど、ミッチンにならバレてもいいかなと思って」

「ミッチンって呼ぶなよ」
僕は小学生の頃、みんなからミッチンと呼ばれていたが恥ずかしいのでやめさせていた。
澤登 育美(さわのぼり いくみ)と言うのが僕の名前で、女の子のような名前なのであまり好きではなかったが、今はもう気にならなくなった。
少し寂しそうな顔をして育美君と言い直した谷口を見て、僕は少し悪い事をしたような気分になった、距離を置きたい訳ではなく単にミッチンと呼ばれたくなかっただけなのだ。

「最近見ないと思ったらココに入り浸ってたのか、本好きだもんなお前」

「うん、本も好きだけどね、みんなが校庭で遊んだり帰っていくのを眺めるのも楽しいんだよ」
「静かな別の世界を覗いているような感じがするんだ」

「谷口、お前まだ田端とかにイジメられてるのか? 学年進んでクラスも変わったのに」
僕は気になっていた事を聞いた。
田端は数人のグループで谷口をいじめているやつだ。
僕がその質問を口にすると、柔らかな目つきで外を眺めていた谷口の顔が一変した。
しばらく沈黙が続き、その場の空気が凍りついたように感じた。

「もうすぐ終わるよ、僕はもういじめられなくなるんだ」
僕に顔を向けた谷口の目が冷たく光ったように見えた。

年が明けてもう20日になろうとしている。
ここ2、3日は凄い冷え込みで、渡り廊下を歩くのもちょっとした決意がいるほど寒い。
去年の年末は不気味なくらい暖かく、油断していた所にこの寒さなので本当に堪える。

僕は意を決して真鋳のドアノブを掴んだ、信じられないくらい冷たくなったノブを勢い良くひねり外に飛び出した。
向こう側の校舎までダッシュをしようと走りだした僕の足元に座り込んでいるヤツがいる。
「あッ!!」
僕は咄嗟に横へ飛びのいて避けようとしたが、足が引っかかってしまい思い切り地面に転がってしまった。

「痛たたたた……、何してんだよッこんな所で」
僕は苛立たしげにそいつに向かって言った。

そいつは、うずくまって膝を抱え泣いているようだった。
制服は汚れていて肩の部分が少し破れている。

僕はため息をついてから起き上がり、制服についた汚れを払ってから言った。
「谷口……、またやられたのかよ」

うずくまって泣いていたヤツは「谷口 剛」と言う同級生で、この中学に入るまでは良く遊んだやつだった。
谷口は体が小さく、気も弱くて仕草がオカマっぽいとイジメられていた。
始めは僕も谷口をかばっていたのだが、あまりにも自分で解決しようとしない態度が嫌になり距離を置くようになってしまっていた。

僕は谷口の所まで行き、埃を払って立ち上がらせようと腕を抱えて引き起こした。
谷口は自力で起き上がろうとしないため、引っ張り上げるのに相当な力が必要だった。

「こんな寒い所にいたら風邪引いちまうだろ……、保健室行こうぜ」
僕はそう言って谷口の顔を覗き込むと、口が切れて血が出ていた。

谷口は保健室に行くのを嫌がり、図書室へ行くと言って聞かなかった。
僕はよろよろ歩く谷口の後をついて歩いた。

「大丈夫そうだな、それじゃあ俺は部活に行くな!」と喉まで出ていたが、なんだか言い出せずに図書室まで来てしまった。

 


書こうと思います。
なんか稚拙な文章になると思う……(^^;
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