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積まれた本の間をソロソロと歩いて行くと、谷口が部屋の奥に立っていた。
だらりと力無く下がった手には小さなナイフを持っている。
「おいッ! 谷口!! 何やってんだッ」
僕はナイフを見て自殺でもするのかと思い、血の気が引いた。
「寄るな!!」
谷口は今まで聞いた事の無い大きな声で駆け寄ろうとする僕を制した。
僕はその声に驚き、その場で固まってしまった。
その時、谷口の足元に何か見えた。
文字のような絵のような、禍々しいデザインの模様が描いてある。
「大丈夫、安心して良いよ死んだりしないから」
「見ててよ」
谷口は静かに目を閉じると、ナイフで自分の左手の親指に傷を付けた。
たちまち血が滴り、床を濡らした。
落ちた血を足を使って拭くような動作を見せると、足元の模様が青白く光り始めた。
「う、うわぁ!!」
僕は驚き、二・三歩後じさってしまった。
見る間に光が上に伸びて行き、谷口の全身を包んでしまった。
僕は何がなんだか分からずに、呆然とその様子を眺めていた、というよりも身動きが取れなくなってしまたのだ。
綺麗なベールに包まれたような光が谷口を包んでいたが、その光が少し歪み始めた。
段々歪みが酷くなり、竜巻のように谷口の周りを回転しはじめた。
次の瞬間、谷口がガクガクと痙攣しながらうなり声を上げた。
「ううぐぐぅッ!! イギギィ……」
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