年が明けてもう20日になろうとしている。
ここ2、3日は凄い冷え込みで、渡り廊下を歩くのもちょっとした決意がいるほど寒い。
去年の年末は不気味なくらい暖かく、油断していた所にこの寒さなので本当に堪える。
僕は意を決して真鋳のドアノブを掴んだ、信じられないくらい冷たくなったノブを勢い良くひねり外に飛び出した。
向こう側の校舎までダッシュをしようと走りだした僕の足元に座り込んでいるヤツがいる。
「あッ!!」
僕は咄嗟に横へ飛びのいて避けようとしたが、足が引っかかってしまい思い切り地面に転がってしまった。
「痛たたたた……、何してんだよッこんな所で」
僕は苛立たしげにそいつに向かって言った。
そいつは、うずくまって膝を抱え泣いているようだった。
制服は汚れていて肩の部分が少し破れている。
僕はため息をついてから起き上がり、制服についた汚れを払ってから言った。
「谷口……、またやられたのかよ」
うずくまって泣いていたヤツは「谷口 剛」と言う同級生で、この中学に入るまでは良く遊んだやつだった。
谷口は体が小さく、気も弱くて仕草がオカマっぽいとイジメられていた。
始めは僕も谷口をかばっていたのだが、あまりにも自分で解決しようとしない態度が嫌になり距離を置くようになってしまっていた。
僕は谷口の所まで行き、埃を払って立ち上がらせようと腕を抱えて引き起こした。
谷口は自力で起き上がろうとしないため、引っ張り上げるのに相当な力が必要だった。
「こんな寒い所にいたら風邪引いちまうだろ……、保健室行こうぜ」
僕はそう言って谷口の顔を覗き込むと、口が切れて血が出ていた。
谷口は保健室に行くのを嫌がり、図書室へ行くと言って聞かなかった。
僕はよろよろ歩く谷口の後をついて歩いた。
「大丈夫そうだな、それじゃあ俺は部活に行くな!」と喉まで出ていたが、なんだか言い出せずに図書室まで来てしまった。
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