「ふぉあああっ!!!」
僕は小さな赤い塊が喋ったのを見てパニックになり、ドアの所まで後ずさりノブを回した。
ガチャガチャガチャ!!
ドアノブが回らない、必死に捻ろうと力を入れるがまったく動かなくなってしまっていた。
「ご主人様!」
「待ってくださいよ、ご命令を下さい」
赤い塊はニヤニヤと笑いながら、僕に命令をしろとせがんでいる。
「命令って言ったって何を命令すれば良いのか分からないよ!!」
僕は大声で叫んだ。本当は命令だとかそんな事よりも、ただこの赤い生き物が怖い。
本当に僕が呼び出してしまったのは悪魔なのだろうか。命令の変わりに命を貰うなどと言い出しそうな気がして怖い。
赤い塊はスッと僕から離れ、得意げに空中で一回転してからお辞儀をした。
「おっと自己紹介が遅れたな、俺はバムヤン」
「炎を操る悪魔だ、俺にかかれば一瞬で見渡す限り一帯を火の海にしてご覧に入れるぜ」
バムヤンと名乗るこの悪魔は、物騒な事を涼しい顔をしてサラリと言ってのけた。
「そんな事しなくていいよ!!」
「って言うか、何もしなくて良いです」
僕は慌てて言った、この町を火の海にされてしまっては堪らない。
「このバムヤンを呼び出さしてそれはねぇぜ!!」
「久々に暴れられると思って出てきたのによッ、さぁ景気良く燃やしちまおうぜ!!」
「嫌なやつの一人や二人いるだろ!?」
バムヤンは僕の腕を掴み揺すっていて、何かを燃やす気マンマンでいるようだ。
「いや、だから俺は何も燃やして欲しくなんか無いんだよ、呼び出してごめんなさい!」
僕は今起こっている状況がよく理解できていないが、バムヤンと言葉を交わしているのは事実だ。
僕が呼び出してしまった悪魔が僕に命令を求めている。
「バムヤン……下がって良いぞ……」
僕の真後ろから野太い声が響いた。
地鳴りのように部屋中に響く声だった。僕はその声を聞き、直立不動になってしまった。
「だだ……大魔王さまッ!!!」
バムヤンは慌てて畏(かしこ)まりひ汗を流しながらブルブル震えている。
僕は怖くて後ろを振り返る事が出来なかった。
「な、なぜ大魔王さまご自身が人間の従魔になど……」
「そうとは知らず……申し訳ございません」
バムヤンは怯えた目つきで僕に向かって許しを請うように頭をさげた。
「最近、悪魔どもの素行の乱れが酷いと聞いてな、様子を見にきたのじゃ」
「主人が望まぬ事を無理強いして好き放題に暴れておる物もおるとか……」
「不穏な動きをしている輩もおると言う話じゃが……バムヤン、おぬしは何か知っておるか!?」
「そ……そのような事は聞き及んでおりませんが、何か分かりましたらすぐにお知らせいたしますッ」
バムヤンは必死に笑顔を作ろうとしているが、引きつった笑いになっていた。
だ……大魔王ってなんだよ……何か凄くややこしい事に巻き込まれてしまっている感じがする。
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