僕と魔王はリビングの机に用意してあるハンバーグの前に黙って座った。
岬ねぇちゃんのハンバーグは付け合せの人参やポテトなども付けてくれて、レストランで食べるやつよりも美味しい。
しかし、今はそれ所ではなく、魔王のをどう説明するか考える事で頭がいっぱいになっていた。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ!」
岬ねぇちゃんは満面の笑顔で早く食べるように促した。
「うっ……うん」
僕と魔王は目を合わせ、促されるままハンバーグを食べ始めた。
魔王は自分の姿が見える人間がいる事に納得がいかないようで、首をかしげながら岬ねぇちゃんを見ている。
僕は美味しいはずのハンバーグを食べているのに味わう余裕が無く、岬ねぇちゃんの顔もみれない。
「おぉおッ!!」
魔王が大きな声を上げた。
僕は何か起きたのかと思い、驚いて魔王を見た。
「美味いッ、これは美味いぞッ」
魔王は岬ねぇちゃんのハンバーグを食べて感動し、美味い美味いと言いながらモリモリ食べている。
僕の心配をよそに気楽なもんだと少し腹が立った。
「あら嬉しい、作った甲斐があるわぁ」
と岬ねぇちゃんも上機嫌になったので良かった。
「育美とはどこでお友達になったのかしら?」
岬ねぇちゃんが魔王に質問した。
僕はその瞬間凍りつき、魔王に余計な事を言うなと目で合図を送ろうとした。
しかし、魔王はハンバーグに夢中で、僕の合図を見ちゃいない。
「つい先ほどご主人さまがワシを魔界から呼び出したんじゃ!」
「ちょッ!!」
僕は魔王のストレートな返答に驚き、声を上げてしまった。
「へ~、魔界から人を呼び出すなんて育美に出来るんだぁ、凄いね!」
岬ねぇちゃんは楽しそうに僕のほうを見ながら話している。
まったく疑問に思っていないのか、始めからまったく信じていないのか……どっちなのか分からない。
「魔王さん、まだハンバーグあるわよ?」
岬ねぇちゃんは魔王の皿にハンバーグをもう一つ乗せた。
「ご主人さまは凄い能力をお持ちですよ」
「これからワシと力を合わせてこの世界を少し浄化していただく」
使いされたハンバーグをモリモリ食べながら魔王は言った。
「え~~ッ、凄いじゃない育美」
岬ねぇちゃんが嬉しそうに僕の方を向いた。
こんな話を聴いてすぐに受け入れてしまうって……ネジが外れてる所があると思っていたけど。
もしかすると岬ねぇちゃんは凄い大物なのかもしれない……。