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「スロットって何?」
僕は魔王に聞き返した。

「スロットとは、人間が我ら心に持つ器のような物でな、人それぞれ大きさが異なる」
「あの谷口と言う男にはワシを受け入れるだけのスロットが無かったと言う事だな」
「あの者には先ほど育美が呼び出したバムヤンでさえ受け止められぬだろう」

「……良く分からないけど、受け止められないとどうなるの?」

「精神、体、共に壊れてしまうだろう」
魔王は空になったコップをクルクル回しながら平然とした顔で言った。

「ぼ……僕は大丈夫なの?」
バムヤンと魔王を同時に呼び出した僕は大丈夫なのだろうかと不安になった。
僕も谷口とそう変わらない平凡な子供なのだ。

「育美、あなたは人間には珍しいくらい大きなスロットを持っている」
「ワシの他にあと数体の悪魔を受け入れられるだろう……ただし、やはり許容範囲を超えれば……」
魔王は手を胸の前でパンッと叩き、弾けるような動作をした。

僕は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。

その後、魔王から一つだけ呪文のような言葉を教えてもらった。
他にも色々覚えなくてはいけないらしいが、手始めに一つだけと言う事だった。
魔王は沢山の魔法を使えるが、僕の家来となった今、僕が指示しなければ魔法を使う事が出来ないらしい。

魔王から教えてもらった呪文は恐ろしく威力が強いため、緊急事態の時以外は使うなと言われた。
緊急事態って何だよ……。

「ただいまぁ、育美ぃ」
岬ねぇちゃんが帰って来た。
ねぇちゃんには魔王は見えないだろうが、もし気配を感じたり、見えてしまったら卒倒するだろう。
変なのを家に入れてと怒られるかもしれない。

「魔王ッ、とりあえず隠れて」
僕は慌てて魔王に言った。

「大丈夫、普通の人間にはワシの姿は見えない」
そう言って床に座って動かなかった。

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